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2022/10/13
労働時間に含まれる時間とは
労働基準法32条は,使用者は労働者に,休憩時間を除いて,1週40時間を超えて労働させてはならず,かつ,1日8時間を超えて労働させてはならないと規定しています。
法定労働時間や残業代の支払いの場面において問題になりやすいのが,労働基準法が規制する「労働時間」とはどのような時間を指すのかという点です。
行政解釈においては,労働時間は,「労働者が使用者の指揮監督のもとにある時間」と定義しています。判例(三菱重工業事件〔最高裁平成12年3月9日判決〕)も,「労働基準法上の労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう」とし,「使用者の指揮命令下に置かれていると評価できる」か否かで労働時間か否かを判断するとしています。
以下,労働時間といえるか否かについて問題になりやすい場面を簡単に解説します。
1 始業前の朝礼等
始業前に,朝礼,ミーティング,体操などを行う会社もあるかと思います。これらの時間は,使用者の指揮監督下において義務的に行われる場合は労働時間となりますが,逆に言えば,そうでない場合,労働時間性は否定されることになります。この点,近時判決のあったオリエンタルモール事件(東京高裁平成25年11月21日判決)においては,ラジオ体操,朝礼への参加,日報作成,電話応対,システム入力,発表会への参加等は労働時間ではないとして,残業代の請求を棄却しました。
2 始業前の着替え時間等
始業前の着替え時間については,着替えるべき作業着の着用が義務的か,当該業務内容と作業着の着用の必要性により判断が分かれると考えられます。三菱重工業事件における裁判所の考え方からすれば,作業着への着替え時間は,作業着の着用が義務的で,それ自体が入念な作業を要する場合を除いては,業務従事の準備に過ぎず,労働時間には該当しないと考えられます。
3 手待ち時間
小売店の店員などが,顧客を待つ時間(いわゆる,手待ち時間)は,顧客の来店があれば,それに対応することが労働者に義務付けられているため,労働時間にあたります。
4 仮眠時間
事業場内での仮眠時間が問題となった大星ビル事件(最高裁平成14年2月28日判決)は,ビル警備員の夜間仮眠時間も,仮眠室への滞在と警報等への対応が義務付けられていたことから,仮眠時間を労働時間にあたると判断しました。仮眠時間が労働時間にあたらないためには,単に労働していないというだけではなく,使用者の指揮監督下にないこと,すなわち労働からの解放が必要です。
5 外部研修等への参加
所定労働時間外に,企業外で行われる研修等や企業の行事へ参加する場合も,参加が義務的で会社業務としての性格が強ければ,労働時間と判断されることになります。
このように,どのような場合に,どのような時間が労働時間となるかの判断は容易ではありません。従業員から残業代の請求がなされた場合も,どのような時間が労働時間となるかをきちんと判断した上で対応することが必要です。
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