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2022/11/17

セクハラに対する懲戒処分の有効性

会社内でセクハラ案件が発生した場合に,会社側としては,適正な手続にのっとって事実関係を調査し,セクハラの事実が存在したと認められる場合には,その加害者に対し懲戒処分を行うことが考えられます。会社が行ったセクハラ加害者に対する懲戒処分の有効性について,近時参考となるべき最高裁判決(最高裁平成27年2月6日判決)が言い渡されました。

 

大阪市が出資する第三セクターの水族館に勤務する男性管理職2名が,複数の女性従業員に対して,1年以上の期間にわたり,性的な発言を繰り返したことから,このセクハラ行為に対する懲戒処分として,2名の男性管理職がそれぞれ30日,10日の出勤停止及び降格処分となりました。この懲戒処分を受けた男性管理職2名が,当該処分が重すぎると主張して,当該懲戒処分の無効確認等を求め訴訟となりました。

 

第1審の大阪地裁は男性管理職らの請求を棄却しましたが,控訴審の大阪高裁は,セクハラ発言に対して女性従業員らが明確な拒否の姿勢を示しておらず男性管理職らは当該発言が許容されるものと誤信していたことや,本件セクハラ行為に対して使用者側から事前に注意等を受けていなかったことなどからすれば,懲戒解雇の次に重い処分である出勤停止処分は重きに過ぎるとして出勤停止及び降格処分は無効であると判示しました。

 

これに対し,最高裁平成27年2月6日判決は,大阪高裁の判決を破棄し,出勤停止及び降格処分は有効であると判断しました。この判断の根拠として,最高裁は,当該セクハラ発言の内容が極めて不適切なものであったことを前提とし,使用者側において,これまでセクハラ禁止文書を作成したり,セクハラに関する研修への参加を毎年従業員に義務づけたりしていたこと,男性管理職らが指導的立場にあったことなどを指摘しています。

 

本件は,性的発言のみのセクハラ行為であり,身体接触などはない事案でした。また,被害者らから明確な拒否の意思表示があったとは認定されていません。今回の最高裁判決は,当該セクハラ行為を客観的・外形的に不適切さの程度を判断していますので,セクハラ加害者から,「被害者が嫌がっていると思わなかった。」とか,「被害者が拒絶しなかった。」などの弁明は,懲戒処分にあたりそれほど重視すべき事情とはいえないことになります。また,使用者側において,それまでセクハラ行為に対する研修等を行っていることが,セクハラ加害者に対する厳しい処分を正当化する一事情となりますので,このような研修を日常的に行うことの重要性が再度認識されたとも言えるでしょう。

 

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