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2023/03/02
会社分割による労働契約の承継
会社分割は,平成12年5月の商法改正により創設された,事業に関して有する権利義務の全部又は一部を他の会社に承継させる制度です。会社分割には,既に存在する会社が事業を承継する吸収分割と,新たに会社を設立してその会社が事業を承継する新設分割の2種類があります。この商法改正と同時に成立した,いわゆる労働契約承継法は,会社分割に伴って生じる労働契約の変動に関し規律しています。
会社分割に伴う権利義務の移転については,分割契約(吸収分割の場合)や,分割計画(新設分割の場合)において定められます。ですので,労働契約の承継の範囲も,原則として分割契約や分割計画によって定められることになります。すなわち,労働契約の承継に関して,転籍や事業譲渡において必要とされるような,個別労働者の同意は必要ではありません。
もっとも,会社が特定の労働者を恣意的に選別する場合など,労働者に不利益が発生する事態を防止するために,以下のような制度が定められています。
まず,承継事業に主として従事する労働者の労働契約が承継の対象となっていない場合は,その労働者は異議を述べることができ,異議を述べた場合,その労働者の労働契約は新設会社又は吸収会社に承継されることになります。
また,承継事業に主として従事していない労働者の労働契約が承継の対象となっている場合は,その労働者は異議を述べることができ,異議を述べた場合,その労働者に関する労働契約は新設会社又は吸収会社に承継されないことになります。
さらに,会社分割において労働契約の承継を円滑に行うために,会社法及び労働契約承継法は,分割会社に以下のような手続を求めています。
まず,会社分割を行う場合,その背景や理由,承継事業に主として従事するものとされる労働者の範囲,労働協約の承継の仕方,分割に際しての労働関係上のその他の諸問題について,その全ての事業場において,労働者の過半数を組織する組合または過半数を代表する者との協議を行い,労働者の理解と協力を得るように努めなければなりません(いわゆる「7条措置」)。
また,会社分割における労働者の承継を進めるにあたっては,承継事業に従事することになる労働者との間で,新設会社又は吸収会社への労働契約の承継の有無,分割後の業務内容・就業場所・就業形態等について会社の考え方を説明し,労働者の希望を聴取し,協議をしなければなりません(いわゆる「5条協議」)。
さらに,分割計画や分割契約の作成後は,分割を承認する株主総会の日の2週間前までに,承継対象となる労働者や労働協約を締結している労働組合に対し,承継事業の概要等,法定の事項を通知しなければなりません。
このように,会社分割に際しては,法定の手続を遵守する必要があり,手続違背が存在した場合には,労働者から労働契約承継の効力を争われることにもなりますので,注意が必要です。
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