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2023/06/07
労災保険における業務災害の認定
労働災害が発生した場合,被災した労働者やその遺族が政府に請求することで,保険給付を受けることができます。
保険給付の内容は,①傷病の療養のための療養給付,②療養のための休業補償としての休業補償給付,③治癒しても障害が残った場合の補償としての障害給付,④被災者が死亡した場合の遺族給付,⑤死亡した場合の葬儀費用としての葬祭料,⑥1年6か月を経過しても治癒しない場合の補償としての傷病年金,⑦障害年金又は傷病年金を受け取る者の介護費用としての介護給付があります。
労災保険は,「業務災害」と「通勤災害」に対して給付されます。
「業務災害」とは,「労働者の業務上の負傷,疾病,障害又は死亡」と定義されています(労働者災害補償保険法7条1号)。業務災害該当性の判断は,業務上の災害といえるかどうか,すなわち,(1)業務といえるかという業務遂行性の判断と,(2)業務上のものといえるかどうかという業務起因性の判断によって行われます。
(1)業務遂行性
業務遂行性とは,労働者が事業主の支配ないし管理下にある場面という意味で,広く認められます。業務遂行性が認められる場面としては,事業場内で作業に従事中,事業場内での休憩中,始業・終業後の事業場内での行動中,事業場外で労働しているときや出張中などです。
事業主としては,事業場外で任意で行われる従業員親睦活動や純然たる私生活などを除き,ほとんどが業務遂行性が認められるものと考えられる方がいいでしょう。
(2)業務起因性
業務遂行性が認められた場合,次に業務起因性が判断されます。
業務遂行性が認められる作業中の災害については,原則として業務起因性が認められることになります。もっとも,地震や台風などの自然災害による場合や,外部者が侵入してきて暴力をふるわれた場合,労働者側が飲酒の上で作業をしたり,勝手に喧嘩をしたなどの私的な理由に基づく場合には業務起因性が否定されます。なお,熊本地震の場合にも問題となりましたが,地震が原因であっても,地震による被害を受けやすい場所で働いていて被害を受けたなど,業務に内在する危険が現実化したと言える場合には業務起因性が肯定されることがあります。
その他,業務起因性について問題となるのが,脳・心臓疾患です。脳・心臓疾患は高血圧や動脈硬化などの基礎疾患を持つ労働者が発症することが多いため,そもそもの基礎疾患を原因とするのか,業務に起因するのかが問題となります。
この点,最高裁判例は,業務による過重な負荷が,労働者の基礎疾患をその自然の経過を超えて増悪させ,発症に至ったと認められるときは業務起因性が認められると判断しています(最高裁平成12年7月17日判決)。
これを受けて,厚生労働省は,発症前1か月間に時間外労働が100時間を超えていた場合や,発症前2~6か月間に時間外労働が1か月あたり80時間を超えていた場合には,業務との関連性が強いとする基準を定めています。
また,うつ病などの精神障害についても,厚生労働省が基準を示しており,発病前6か月間に業務による強い心理的負荷が認められ,業務以外の心理的負荷及び個体側要因により発症したとは認められないという要件を満たした場合に業務災害にあたるとしています。
心臓疾患や精神疾患の業務起因性判断は,残業時間や心理的負荷のかかる出来事(パワハラやセクハラなど)の有無を要素として判断されることになります。
以上のとおり,業務遂行性や業務起因性が肯定されて,業務災害であると認定されると,労働者は労災給付を受けることになります。
一方で,使用者は,労働者から労災給付で補填されなかった損害の賠償を求められることがあります。すなわち,労災給付は,精神的損害をカバーするものではなく,また給付額も定型的に定められているため,労働者が被った損害のすべてが補填されるわけではありません。そのため,使用者は,労働者から,その補填されなかった損害について,民法上の不法行為や債務不履行に基づく損害賠償請求を受けることがあるのです。
そのようなリスクを回避するために,事業主には,適切な労務管理,安全で快適な職場環境の整備等労働者の安全衛生に配慮することが求められています。
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