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2024/01/23
職務発明
1 はじめに
労働者と使用者との労働関係において、労働者が働いて得られた成果は、原則として使用者に帰属します。このことは、労働者が職務遂行上発明をした場合も基本的に同様です。発明者である労働者が特許を受けた場合であっても、使用者はその特許権について有する通常実施権(特許法35条1項)を行使して利益を得ることができます。
なお、「職務発明」とは、「その性質上使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明に至った行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明」をいいます(同項)。会社からの職務命令がない場合であっても、業務範囲に属し、職務に属すると認められる以上は、職務発明と認められることになります。
2 特許を受ける権利
そもそも、職務発明について、「特許を受ける権利」は発明者と使用者のどちらに帰属するでしょうか。
特許法は、原則として、発明者である労働者に特許を受ける権利を認めています(同項)。
ただし、「契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたとき」(「事前取得規定」といいます。)は、職務発明が発生した時から、使用者が「特許を受ける権利」を取得することとされています(同条3項)。
3 労働者が受ける「相当の利益」
上記のように、特許を受ける権利自体を使用者側に移してしまう場合や、発明者が特許を受けた後で特許権を使用者に譲渡する場合、特許についての専属使用権を使用者に設定した場合には、発明者は、「相当の金銭その他の経済上の利益」(「相当の利益」といいます。)を受ける権利があります(同条4項)。
この「相当の利益」については、「契約、勤務規則その他の定めにおいて相当の利益について定める場合」には、その内容が「不合理」でない限りは、当該合意の内容に従うことになります(同条5項)。ただし、このような合意がない場合や、合意が不合理であるとされた場合は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が行う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情を考慮して認定されることになります(同条7項)。会社の想定を大きく上回る「相当の利益」が認められてしまう可能性があります。
4 会社の取るべき対応
職務発明について、特に会社内での定めがない場合は、上記のとおり、発明者である労働者に特許を受ける権利が帰属し、会社は通常実施権を有するにとどまります。
業務に密接にかかわる職務発明であるならば、少なくとも会社が専用実施できなければ、発明者である従業員が退職し、転職や独立した場合に、他者によってその発明が使用されることになってしまいます。
会社としては、前もって職務発明に関する規定を定めておくべきでしょう。
また、その際は、「相当の利益」の規定につき、不合理と判断されないように注意する必要があります。
どのような定めをしておくべきかお悩みの場合は、弁護士法人アステル法律事務所にご相談ください。