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2022/09/22

裁判所以外での労働紛争解決システム

1 会社内での紛争解決


会社と従業員との間の労働紛争が生じると,それに伴って,会社にも従業員にも,様々な不利益が生じます。

会社側には,紛争を解決するためのコスト(お金と時間)がかかるのはもちろん,裁判になるなど紛争が明るみに出ることによる社会的な評判の低下のリスクもあります。また,当該従業員との間だけではなく他の従業員のやる気の低下や離職をもたらしかねず,生産性の低下・コスト増につながりかねません。

このため,会社としては,そもそも紛争が発生しないような予防策に努めなければなりませんが,会社内で従業員の意見・要望を吸い上げて紛争を解決するシステムも重要です。

労働組合もそのシステムの1つですが,労働組合のない会社でも,自己申告制度や人事担当者との面談などの制度により工夫がなされているでしょう。しかし,それらの制度では,経営戦略等に関する意見は上がっても,労働条件等についての意見が上がりにくい傾向があるとされ,次に述べるような労働局や労働委員会での紛争解決に移行していくこととなります。

 

 

2 労働局での紛争解決


労働局は,ワンストップの総合労働相談制度を設けています。

周知が進み,相談件数は平成20年から平成27年まで8年連続で100万件を超える高止まり状況です。熊本労働局には,年間約9000件(平成27年度)の相談が持ち掛けられています。

相談内容には,法令違反を含むもの(賃金未払い,労働時間規制違反)と含まないもの(退職勧奨,いじめ・嫌がらせ)があり,熊本労働局では,前者が約4割,後者が約6割となっています。

全国的には,いじめ・嫌がらせの相談が最多です。

法令違反を含むとされた場合には,労働基準監督署において指導・監督を受けることとなります。

法令違反を含まない部分については,労働局の紛争調整委員会の委員の中から指名されたあっせん委員3名によるあっせんにより,あっせん案が提示されることになります。

もっとも,あっせん案に拘束力はなく,実際にこれにより解決に至る割合は30%台にとどまっており,裁判所の労働審判での解決件数の方が上回っているようです。

 

 

3 労働委員会での紛争解決


労働委員会は,労働争議の調整制度としてあっせん,調停,仲裁という3つの制度を設けていますが,9割以上はあっせんによる調整が行われています。

あっせんを申請するのは,個々の従業員や事業主です。「労働争議」の解決ということで,労働局よりも,労働組合が関わる集団的な紛争を取り扱っている傾向があります。

あっせんは,あっせん員候補者の中から指名された公・労・使各1名の3名により行われ,半数ほどが解決に至っています。

 

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